ジェニーさんのAnneは、元気いっぱい

原作: L.M.モンゴメリの「赤毛のアン」
脚本: ポール ルドー
監督: パトリシア ヴァンストーン
衣装及び舞台装置デザイン: スー レペイジ 
照明: スティーブン ホーキンス
音楽: イーアン タンブリン

Young Peoples Theatre
165 Front St. East
(416)862 2222
チケット全席25ドル
8歳以上にお進め

L.M.モンゴメリ著「赤毛のアン」が北米で出版されたのは1908年。出版90周年を記念して、現在トロントのYPT(ヤング ピープルズ シアター)では、舞台劇「Anne」が上演されている。
 

日曜午後に出掛けてみた。場内はお子さん連れのお母さん達をはじめ、若いカップルや高齢の方々で満席。モンゴメリの孫ケイト マクドナルドさんもお子さん連れでいらしていた。
 

マリタイム(大西洋沿岸)地方の音楽が流れて来ると、そこは19世紀末のプリンスエドワード島。大学への奨学金授与の知らせとともに、シャーロットタウンの学校からアヴォンリー村へ汽車で戻って来たのは、立派に成長したアン。場面は一転し、物語は、アンが最初に村へ到着した日々へと戻って演じられる。孤児の女の子が、子育ての経験のない老兄妹マシューとマリラにひきとられて成長していく過程が、アンの失敗のエピソードを中心に描かれる。
 

舞台左手には、アンの愛する家「グリーンゲイブルズ」の屋内セット。舞台右手の家屋セットは、場面に応じて、アヴォンリー村お目付け役リンド夫人宅やアンの「腹心の友」ダイアナの家となったり、お店や学校の役割を果たす。舞台中央部は、場面ごとに、駅になったり、アヴォンリー村への道となったり、エレーン姫に扮したアンがボートで流れてゆく川へと変わる。小道具の木の箱が、御者台やボートの役目を果たしたりと、実にうまく工夫されている。観客はアンの目を通して、想像力をたくましくして舞台を観なくてはならない。
 

ノヴァスコシア出身のジェニーレイモンドさんは、このアン役でトロントデヴューした。赤毛の彼女は、溌剌とした「アン」のイメージにぴったり。アンお得意のおしゃべりも勢いよく、聞いているこちらは、圧倒されてしまう。リンド夫人に謝罪する場面では、夫人の足下にすがりつくような身体全体を使っての彼女の演技に、観客は大笑い。
 

主役アンが元気いっぱいで、ギルバート役ジェイミー ロビンソンさんとダイアナ役キャサリン カタトスさんは押され気味。脇役では、意地悪ジョシー パイを演じたキャロリン ヘイさんのきびきびしたユーモラスな動きと、リンド夫人役でベテラン俳優ロビン クレイグさんの表情豊かな演技が光っていた。
 

ポール ルドー氏の脚本は、モンゴメリの原作の語彙を生かし、アンの凝った大掛かりな台詞を十分に取り入れている点が、印象に残った。子どもらしい動作と大人びた言い回しを強調することで、舞台のアンがより一層個性的になっている。
 

特筆すべきは、スー レペイジさんデザインの衣装の素晴らしさ。マシューがアンに贈るパフスリーブのドレスは、原作では濃い茶色だが、舞台のマシューは、「茶色はいけない」と言って可愛らしい花柄の布地を選ぶ。リンド夫人によって縫われたドレスの袖の豪華なこと。これは、実際に見てのお楽しみ。
 

原作を読んでいるとはいへ、優しかったマシューの突然の死の場面では、涙ぐんでしまった。周囲の御婦人方もやっぱり泣いていた。
 

アンのファンには、絶対見逃せないYPTの「Anne」は、5月17日まで。

(この文章は「日加タイムス」1998年4月17日に掲載されたものです。)

Yukazine

モンゴメリ

モンゴメリ記事
Copyright 1999 Yuka Kajihara