ココアのようにあったかい短編集
「アンのクリスマス」

ルーシー モード モンゴメリ著
リー ウィルムハースト編
片岡しのぶ訳
暮らしの手帖社
ISBN 4-7660-0058-7 C0098

長くて寒い冬を楽しく過ごすには、あったかい部屋での読書が一番ですね。ホリディーシーズンにお薦めの一冊は、「アンのクリスマス」。
 
「赤毛のアン」(1908)の作者ルーシーモード モンゴメリ(1874ー1942)が残した500を超える短編小説の中から選ばれた16編が収められています。どの話も、笑いや涙を誘い、紆余曲折ありながらもハッピーエンド。アメリカの宗教関連雑誌に掲載された作品は、やや道徳的ニュアンスが強いものの、発表媒体を意識して執筆投稿していたモードの作家修行時代がうかがえて、とっても興味深い。
 
モード25歳の1899年にアメリカの雑誌に発表された「ぼんやり先生のおかげで」から、1900年代初頭の作品が多く、唯一「アンの幸福」の中からの抜粋「キャサリンとアンのクリスマス」がモード62歳の晩年の作品です。
 
発表年代順に読んでゆくと作者の成長ぶりが感じられておもしろい。でも、残念ながら、日本語版には発表年代および出典の記載がなく、そういう読み方はできないんですね。編集者が、不要な情報と判断したのでしょうか。日本の読者への配慮が欠けているようで、とっても残念。
 
さて、訳はベテランの片岡しのぶ氏。こなれた和文でたいへん読みやすい。家庭で、おとなが、こどもたちに読んであげるのもいいでしょうね。また、年少者にも親しみやすい、「ですます調」のお行儀よい丁寧な文章であります。
 
ちょっと古めかしいけれど、異国の香りただようクリスマス気分が味わえる一冊。

(この文章は「オーロラ」第25号1998〜99年に掲載されたものです。)

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