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夏の終わりのとある週末。フロントストリート沿いのお店の窓を順々に覗いてたら、モード の写真が突然目にとびこんできた。なんだ!と思ってよく見たら、カナディアン・ステージカンパニーの上演予告。モードのジャーナル3巻と彼女の本や写真がショーウィンドウの中に飾られている。 ジャーナルを基に彼女の人生を描くこの劇のタイトルは、The Wooden Hill。9月23日から10月22日の1ヶ月間公開とある。横長のポスターには、古い家の階段を昇りつつある老齢のモード、そしてアンと思われる女の子が階段上方に陽炎のように描かれている。女の子は微笑みながらモードを見おろし、左手を高くあげて振っている・・・。 というわけで、モード 関連ならチェックをいれてしまう私。9月30日夜8時には劇場内4列目真ん中あたりのイスに深々腰掛けたのでした。観客の入りも上々。劇はモードの祖先の土地を思わせるスコットランド地方のバグパイプの音色で始まった。 舞台中央には、急な勾配の階段のセット。その上方には窓が吊られており、時折明かりが灯る。モードのこれまで暮らした家の屋根裏部屋を象徴しているようだ。場所はモードの家「旅路の果て」荘。時代は第二次大戦中。神経疲労を訴える夫ユーアンと従軍医師を志願する次男 スチュワートの間で希望を失っているモード。 失意のなかで、彼女が本棚のガラス戸を覗くと、そこにはまるで「Anne」の様な女の子Katie が映っていた。Katie に誘われてモードは自分の過去を旅する。大好きなパパとの再会、モードと激しく対立する継母、厳格なMacneill の祖父母も登場。(このおじいさんとおばあさんのいでたちが、本物そっくり!まるで写真から抜け出して来たようだった。)親友のFredeや過去の恋人達との語らい。舞台上で交錯して現れる人々が、モードの人間関係の複雑さ、幸せの時、不幸な出来事など、その時々の人生の出来事を意味する。 最愛の母が逝ってしまったのは天国で、教会の屋根裏部屋が天国だと信じていた幼いモード。亡き母のウェディングドレスを屋根裏部屋から持ち出して、過去を夢みる老いたモード。ついに想像の世界から戻った彼女は、スチュワートに自分のジャーナルの仕舞ってあるケースの鍵をやっとのことで受け取ってもらうと、亡き Frede の幻影に導かれながら、天国への階段を昇ってゆく・・ モードの人生を、ある程度読んで知っていたので、難解な英語の台詞をとばしてもストーリーはわかったけれど、やはり暗いですね。口うるさいおばあさんのモードも、Katie と旅する過去では、ぐーんと気分が若返る。それが尚のこと悲しい。目を奪われたのは、Katie 役の女の子の演技が光っていたこと。彼女が長い赤毛を翻すようにくるりと回ってみせるところは素敵。この子はモードの幼少時を象徴するため、衣装も雰囲気もすべてモード自身の昔の写真を思わせた。 特筆すべきは、この、広すぎない劇場の音声効果のすばらしさだ。訓練された役者さんの澄んだ声が、心地よく耳に届いた。 監督は、Bob Baker。脚本、Don Hannah。東京公演の「赤毛のアン」でマシュウを演じたことのあるRon Hastingは今回のThe Wooden Hill では、ユーアン役を落ち着いた演技で見せてくれた。モード 役のRita Howellも好演。 「赤毛のアン」が好きでたまらないアンのファンは、現実の作者 の人生は知らないほうが良いかもしれません。モード自身に、またはカナダの歴史や文化に興味をもたれるかたにお勧めしたい劇です。 日本で上演される可能性はおそらくないでしょうが、今後トロント公演が好評なら、こちらで続演されるでしょうからトロントに来られる機会がありましたら、まず The Canadian Stage Company に連絡してみてはどうでしょうか。その際、電話帳で番号を確認してね。 The Canadian Stage Company 上記文章は、「Buttercups通信」1994年第97号に掲載されたものです。) |
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